我々は定期的にFさんにメールで連絡を入れていたが、多忙のようで返信がくることはなかった。それが、相談があってから半年以上が過ぎたこの暮れになって、Fさんから久しぶりの連絡があり、食事に誘われた。我々が待ち合わせの飲み屋に行ってみると、Fさんはもう席についていた。顔が少し痩せたように見えたが、表情にはハリが戻っていた。心配をかけたが、なんとか事業のほうは持ち直すことが出来たよ」我々がお祝いを言うと、Fさんは、「これはもう、俺には必要なくなったから」と、我々に一通の封筒を差し出した。
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それは以前渡した書類一式だった。「職務経歴書を書いて、これで転職の用意はできたと思ったら急に開き直れてね、会社の方もうまくいくようになったんだ。不思議なもんだよ」封筒は角が折れ曲がり、所々にペンのシミもついていた。おそらく、Fさんはいつでもこの封筒を背広の内に入れていたに違いない。この書類は出されなかった社長の辞表だ。我々は「記念に取っておいたらいい」と言って、Fさんに封筒を返した。Fさんは照れ笑いしながら、それをもう一度内ポケットにしまいこんだ。